夏休みの思い出① ~夏の隙間に変形菌(伊豆編)~

この夏も暑い日が続いたが、わが家は子どもの夏休みに合わせて何度か旅に出た。

 すべて国内だが、7月末に静岡県・伊豆、8月のお盆帰省に山形県、

その帰省時にもう少し北上して数年ぶりの青森県・奥入瀬へ。

そのあとは日本蘚苔類学会の年に一度の大会のため、私一人で滋賀県へ。

さらにその帰りに友人宅に寄らせてもらい福井県で一泊。 

一息ついて先週末は夏休みの締めくくりにと鳥取県の大山(1709m)を家族で登山。 

ここ1か月で計6県、改めて書きだしてみるとよく移動したなぁ。


日本蘚苔類学会の大会と福井の友人宅以外は家族と一緒なので

どうしたってコケを探したりゆっくり眺めたりする余裕はなかったが、

それでもあきらめずに(というか執念で…)行った先々で目を凝らせば、

コケはもちろん、ミクロな生きものたちとの素敵な出会いは必ずあるものだ。


最初は7月末の伊豆の毎年訪れている民家にて。

庭の中心にはサクラの木があり、ここでは樹幹にコケが見られる。

訪れるたびに変化はないかチェックするのが私の習慣になっている。

木の上方で鳴くアブラゼミを驚かせないように注意しつつ、

顔周りに寄ってくる蚊らとも格闘しながらその幹に近づいてみると… 




▲サクラの木



▲サヤゴケとおぼしきコケ群落の上に白い粒々が見えるでしょうか? もしやこれは…





▲うむうむ、やっぱり変形菌だ!





▲子嚢壁(しのうへき)が崩れて黒っぽい細毛体とその中に白っぽい粒々(石灰節)が見える。

じっと見ていると白砂糖がけの豆菓子が思い出されて、だんだんお腹が空いてくる…。



この民家、じつは親族の持ち物なので今回は変形菌を少しだけ採取させてもらった。

自宅に帰って調べる時にまず開くのはこちらの本だ。



▲『変形菌 発見と観察を楽しむ自然図鑑』(山と溪谷社 2022年発行)


著者は関西の変形菌の観察会でいつもお世話になっている川上新一先生

(ちなみに「写真」の新井さんとは〝隠花植物友だち〟)。

各種の特徴、観るべきポイントが写真と共に端的にまとまっており、初心者にも使いやすい一冊だ。


この本の中で本種に似ているものといえば、

子嚢の見た目や柄の色・長さ、ちらりと見える白色の石灰節などから、

「タマモチモジホコリ」かも?


後日、Facebookにも投稿したところ、友人で変形菌マニアのGさんから

「タマモチモジホコリなら、子嚢の中に石灰質の〝球〟が入っているはず」

とアドバイスを受ける。

そこで採集袋を再び開けて、子嚢の中心に白っぽい球があるかどうか、

ピンセットで子嚢を割ってみることに。

とはいえこの繊細な球を半分に割るのはなかなか至難の業…(だって子嚢の大きさは直径約0.5mm…)



▲どうにか割ってみたが、中心部に石灰質の球は見あたらない



▲さらに前回見た時は白っぽい粒々と思っていた石灰節は、成熟したためか橙色がかって見える


石灰質の球は不在、石灰節は橙色、さらに柄の色の橙色っぽさから、

「タマモチモジホコリ」と同じモジホコリ科モジホコリ属の

近縁種「ハナタマモチモジホコリ」だろうという結論に至る。


いやー、「観察」とは時間をかけて焦らずにじっくり見ることが大切なのだなとあらためて。

暑さですっかり集中力を削がれていたここ最近だったが、これを機に顕微鏡周りの環境を整理整頓し、

もっと集中して観察できる部屋環境を整えようと、現在〝夏の断捨離〟を遂行中である。


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前回の投稿でお知らせしました、NHK文化センターの

「苔ミクロトリップ!~大阪でコケを楽しむ~」講座ですが、

9月も高温予報が出ているためか集客がよくないとのこと。


コケ観察をしていて熱中症になったらもともこもないので、

観察場所は入念に思案中です。安全に楽しくコケ観察をしましょう。

引き続き申込みをお待ちしています!




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